土芳 おもしろう松かさ燃えよおぼろ月 4月11日(旧暦 閏二月二十一日) 火曜日

 おもしろう松かさ燃えよおぼろ月 土芳

貞享五年*三月十一日(1688年4月11日すなわち335年前の今日)、伊賀上野の蓑虫庵での吟。「蓑虫庵集」に「十一日、ばせを翁をやどす おもしろう**松かさ燃えよおぼろ月」とあり、土芳はこの弥生月四日に新築なった庵に芭蕉を招きました。伊勢で芭蕉と合流して上野に滞在中の杜国(万菊丸)も、きっと一緒だったでしょう。

ただこの時、新庵はまだ「蓑虫庵」ではありませんでした。同書に「ある日、翁面壁の画図一帋懐中より取出して、これを此庵物にせばやと夜すがら書かれしと也。讃に、蓑むしの音を聞にこよ草の庵 おしいたゝき、則其初五の字をつみて蓑虫庵と号すべしといへば、よしと也。」と土芳は記しています。芭蕉は三月十九日に万菊丸同行で吉野、高野、和歌浦、奈良、大阪、須磨明石行脚に上野を出立しますから、「蓑虫庵」と命名されたのは芭蕉が泊まってからほどなくだったと思われます。なお、「蓑むし」の句は前年秋、江戸深川での吟です。

*貞享五年は九月三十日に改元され元禄元年となります。 **芭蕉が岐阜で「おもしろうてやがて悲しき鵜飼哉」と詠むのは、土芳句の3か月後の六月頃のことです。

chatGPT斎 今日の一句  おぼろ月 猫も眠らず 屋根の上

以下、「(公益社団法人)俳人協会・俳句文学館」HP「今日の一句:2021年04月」の「四月六日」欄からの引用です。

おぼろ明日すと決め下里美恵子

生れ育った家を壊すことになった。複雑な思いをおぼろな月がつつんでくれた。

「下里美恵子集」
自註現代俳句シリーズ一一(四九)

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