一茶 茨の花爰をまたげと咲きにけり 5月10日(旧暦 三月二十一日)水曜日

 茨(ばら)の花爰(ここ)をまたげと咲きにけり  一茶 

「寛政三年紀行」四月八日(1791年5月10日、232年前の今日)の条に、「八日 晴 古郷へ足を向んといふに、道迄同行有。二人ハ女、二人ハ男也。行徳より舟に乗て、中川の関といふにかゝるに、防人、怒の眼おそろしく、婦人をにらミ返さんとす。是おほやけの掟ゆるがせにせざるハことわり也。又舟人いふやう、『藪の外より、そこそこの内を通りて、かしこへ廻れ』といふ。とく教のまゝにすれば、直に関を過る事を得たり*。(略)隅々ミの下闇を見逃すとハ、ありがたき御代にぞありける。」として掲句を詠みました。一茶は翌日九日は江戸で過ごし、「十日 晴 大聖殿の前より本郷にかゝる。是古郷へ行道の入口也。前途百万歩胸につかへて**、とある木陰に休む。」と、中山道を経て北国街道柏原宿に向けて旅立ちます。

*旧中川の小名木川河口に設けられていた船番所「中川の関」で、番人から見咎められそうになった婦人二人が船頭に教えられた抜け道で無事関所を通過できました。男は原則関所手形は不要でしたが、女は必須で厳しく取り調べるという掟だったものの、細々したところは見逃すといった緩い運用の、庶民にはいい時代だったようです。小名木川は旧中川と隅田川を結ぶ人工川で、隅田川の河口には深川芭蕉庵がありました。 **「おくのほそ道」の「前途三千里のおもひ胸にふさがりて」を踏まえています。

chatGPT斎 今日の一句  薔薇の鳥かごに閉じ込められた虎

以下、「(公益社団法人)俳人協会・俳句文学館」HP「今日の一句:2021年05月」の「五月六日」欄からの引用です。

らも薔薇仲村青彦

教会の花壇は柵が白く低かった。バラのかおりが道路を超えて遠くまでただよっていた。

「仲村青彦集」
自註現代俳句シリーズ一一(五八)

コメント

このブログの人気の投稿

芭蕉 ちゝはゝのしきりにこひし雉の声 4月27日(旧暦 三月八日)木曜日

芭蕉 夏草や兵どもが夢の跡 6月29日(旧暦 五月十二日)木曜日

蕪村 牡丹散て打ちかさなりぬ二三片 6月13日(旧暦 四月二十五日)火曜日