蕪村 牡丹切て気のおとろひし夕かな 5月27日(旧暦 四月八日)土曜日

牡丹切(きっ)て気のおとろひし夕かな  蕪村

今日、須賀川市の乙字ケ滝に行こうと歩いていると、ほととぎすが鳴きました。「初音」です。この頃は声を聞かない年もあるくらいほととぎすは珍しいものになりました。

今日は牡丹の句です。掲句は、安永五年四月十日(1776年5月27日)京で詠まれました。ちりて後おもかげにたつぼたん哉 の句もこの日の作です。

翌六年の「方百里」やこれらの句を、後年詠まれることになる 虹を吐いてひらかんとする牡丹哉  と並べてみると、蕪村の思いが一層よくわかってくるように思います。

蘇東坡の「八月十五日看潮 五首」*の其五に、「海若東来気吐霓」という詩句があります。「海若」は海の神、「霓」は虹霓と言われるように一字でも虹のことです。海の神が東から来るのは「気勢、まさに虹を吐くがごとし」という意味で、蕪村には牡丹が神が吐き出す虹のごとき気そのものだったんでしょう。

*上潮の波が垂直の壁となって大河を遡る「海嘯」現象をうたった連作です。蘇東坡は、熙寧六年(1073年)八月十五日有名な銭塘江の海嘯を見に行きました。

なお、蕪村の牡丹句では有名な閻王の」(明和六年1769年)にがありますが、この句については6月13日の項を参照ください。

chatGPT斎 今日の一句  牡丹咲き乱れる笑みの人の顔

以下、「(公益社団法人)俳人協会・俳句文学館」HP「今日の一句:2020年05月」の「五月十二日」欄からの引用です。

丹影もろともにられけり中尾杏子

ひかりのあるところ、必ず影もある。ただその影を意識するかしないかである。<白牡丹おのが呪縛を解きにけり>同時作。

「中尾杏子集」
自註現代俳句シリーズ一〇( 一五)


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