蕪村 蕎麦あしき京をかくして穂麦哉 6月12日(旧暦 四月二十四日)月曜日

蕎麦あしき京をかくして穂麦哉 蕪村

「洛東のばせを庵にて目前のけしきを申出侍る」と前書があります。

蕪村は、安永五年四月、道立や几董らと京一乗寺の金福寺に芭蕉庵を再興しました。掲句はその落成の日、二十六日(1776年6月12日)の吟です。掲句のほかに、「洛東芭蕉庵落成日 耳目肺腸(じもくはいちょう)こゝに玉巻ばせを庵*」の句が残されています。

許六の「本朝文選」に、「饂飩を好(すく)人あり。其子は蕎麦切を好めり。蕎ずきはうどんを謗り、饂飩方はそばきりをにくめり。日夜朝暮此論やまず。むかしより、蕎とも麦とも、蕎はそば好、麦は麦ずき。」(許六「蕎麦ノ論」)、「先師翁いへる事あり。『蕎麦切・誹諧は都の土地に応ぜず』とて。」(雲鈴「蕎麦切ノ頌」)とあり、掲句はこのことを引いています。なお、雲鈴は支考の弟子です。

*司馬光の「独楽園記」の「耳目肺腸、巻テ己ガ有と為ス」、すべて巻き収めて、見聞きしたり思い考えたりすることに捉われるず、心広く独り楽しむことだそうです。季語は「玉巻く芭蕉」で初夏。

Bing亭 今日の一句  麦の穂に 蕎麦の花咲く 夏の風

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