一茶 旅人に雨降花の咲ニけり 6月17日(旧暦 四月二十九日)土曜日

旅人に雨降花の咲ニけり 一茶 

文化七年五月十六日(1810年6月17日)の詠です。「七番日記」に「十六、昼より雨。浅野正見寺*泊。」として、掲句が記されています。雨降り花とは、雨の季節に咲く花のことで摘むと雨が降るといういわれを持つものが多く、ヒルガオ、ツリガネソウ、シロツメグサやイチリンソウ等を指すそうです。ここは「昼顔を云ふ」と注してあります。

一茶は、文化五年秋に帰郷し、義弟との間で遺産分割についての取り決めをしましたが、なかなか実行されませんでした。そこで再度談判のために、この年「けふハけふハと立おくれつゝ、入梅(つゆ)空いつ定まるべくもあらざれば、五月十日」五月雨の中、故郷柏原に向け江戸を出立しました。途中雨に降られることも多く、一茶は日記に「わらじ摺(ずれ)、鳩のやうにふくれて、歩行心に任せず」「足のいたミ常ならず、木末(こずえ)一本をあが仏とたのミて、僅五里ばかりを三日かゝて」云々と、芭蕉を見倣ってか殊更、道中**の難儀を書き残しています。

*現在の長野市豊野町浅野にある浄土真宗本願寺派寺院。住職が門人だったそうです。なお、一茶は熱心な浄土真宗信徒でした。 **江戸から北国街道柏原宿までは中山道経由して六十里。一茶は十八日に柏原を通り越し一里先の北国街道野尻宿まで行き、翌早朝に柏原入りしていますので、江戸から実質8日間、1日当たり七~八里歩いていることになります。日記の記述は、だいぶ脚色されているようです。

chatGPT斎 今日の一句  昼顔の なみだの傘の かなしみ

以下、「(公益社団法人)俳人協会・俳句文学館」HP「今日の一句:2019年05月」の「五月二十三日」欄からの引用です。

ひめぢよをん美しければ雨降りぬ星野麥丘人

雨の中の姫女苑。雨はしばしば対象に効果を添える。だが、それはいいことであるか。あなたには雨の句が多いと言われたことがある。

「 星野麥丘人集」
続編現代俳句シリーズ一二

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