其角 から衣御影やかけて杜若 6月2日(旧暦 四月十四日)金曜日

 

から衣御影(ミえい)やかけて杜若 其角

元禄三年四月二十五日(1690年6月2日)の詠です。前書に「奉納」とあります。

其角は、亡母の4回忌に当たり墓「母の寺に詣で」宗祇の日次の発句に倣い、「追福の一夏百句を思い立ち」「いざ我心、朝夕の人のすくなき折々、聊ものにかきつく。一夏百句にみちたれば、花摘と名付侍る也。」と、四月八日より七月十九日までの句日記を残します。

掲句は、在原業平の「から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ*」を踏まえています。「奉納」とあることから、この年に本所中之郷へ替地を給わった業平ゆかりの南蔵院への奉納句かもしれません。**

*この歌は「折句」といわれる言葉遊びがなされており、五七五七七各句の頭字に「かきつはた」が折り込まれています。 **其角はこれまで貞享元年(1684)及び元禄元年(1688年)に京大阪などを旅していましたので、「筒井筒」の舞台の奈良櫟本の在原寺と業平神社(現在の在原神社)を訪れたかもしれません。業平神社の御祭神は在原業平です。掲句の「御影」はそのままでも業平の御影だと読めますが、其角が掲句を「折句」仕立てに詠んだとすれば、「かみか」となり「御影は『神か』いや、業平だ」と念を押してるとも読めます。無理筋かもしれませんが…

chatGPT斎 今日の一句  杜若の 咲くたび消える 夢の面影

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