一茶 ともかくもあなたまかせかかたつむり 7月10日(旧暦 五月二十三日)月曜日

ともかくもあなたまかせかかたつむり 一茶

文化四年六月五日(1807年7月10日)の条に、「東橋の西手に大木所せき程にちらして、その一木に大紐つけて、老いたるもわかきも、思ひ思ひ着かざりて、右と左に並びける中に、講頭とおぼしき翁が麾(さい)を上るに随ひ、さまで大木も汗せず引行く。是、去寅三月回禄ニ亡びける本願寺御堂再興のれうとかや。(略) 今目前に見ること、あはれ此人々ハ信心肝に入て、みだ同体のさとりとやらんを致しゝなるか。げにげに仏在世のありさまにも覚へ侍る。」と掲句と「時鳥声をかけたか御材木」を記す。前年三月四日に焼失した浅草の東本願寺別院の再建の「木曳式」を目撃しての一句です。

木曳式は用材を敷地に引き入れる儀式で、その後地鎮の儀式を行い、用材を加工の上いよいよ建築工事に取り掛かる立柱の儀へと進みます。

3年後の文化七年六月十日(1810.7.11)の条に「けふ巳刻、東本願寺御柱立御規式なりとて、老若男女群集して、人に勝る桟敷とらんといどミあらそふ。漸々堂の片隅かりて踞る。柱三本に素木綿(しらゆふ)巻きつけて、三所ニおのおの青紅白の大幣神々しく、黄紅のかがミ餅かざりて、棟梁ハ烏帽子かり衣、其外素袍大紋きたる大工二十人ばかりも居並びつゝ、大祓いを唱へるぬ。彼宗派ハ雑行とて忌事なり。其源としてかゝる祭りするハ深き謂あるなるべし。」と書き残している。「彼宗派」とは浄土宗の事で、一茶は浄土真宗の熱心な信者です。

*写真は、伊勢神宮平成の御遷宮の「御木曳初式」(平成18年4月)の模様です。この時の「立柱祭」は平成24年3月に執り行われました。(神宮HPより)

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