蕪村 降替て日枝を廿チの化粧かな 7月7日(旧暦 五月二十日)金曜日 小暑・温風至(おんぷういたる)

降替て日枝を廿(はた)チの化粧(けはひ)かな 蕪村

「慶子病後不二の夢見けるに申遣ス」と自選句集に前書がありますが、別に明和七年六月十五日(1770年7月7日)筆とする画賛*が残されています。

「慶 いせのくにゝありて、厲鬼に侵され、既世になき人の身にも入べかりけるを、稀有にして更生しければ、/ 降更て日枝を廿のけはひかな / 慶 芙蓉峰にのぼると夢て画賛をこふ。余例の等閑に過しけるが、今やその本復を賀して、又その日来のもとめを塞ぎ侍る。 蕪村 干時(ときに)庚寅六月望」

慶子は大阪の女形中村富十郎の俳号で、この年伊勢の古市の夏芝居に出演中発病したものの、回復して上京していました。「降替て」は富士山の雪が消えて新しい雪に降り替わるという意味で六月の季だそうです**。「日枝」は伊勢物語の富士の峰は比叡(日枝)山を二十かさねたほどの高さということから二十と富士に掛けて、富士の振り替わった雪のような美しい化粧に映える女形の若々しさを讃えています。

今日は、二十四節気の小暑、 七十二候 温風至です。

* 写真は「蕪村全集第六巻」(講談社1998)P389より。 **万葉集巻三の長歌「詠不盡山歌」の反歌に「ふじのねに ふりおくゆきは みなつきの もちにけぬれば そのよふりけり」

chatGPT斎 今日の一句  鏡台の 舞台化粧の 夢の影

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