山頭火 別れてからもう九日の月が出てゐる 8月10日(旧暦 六月二十四日)木曜日

別れてからもう九日の月が出てゐる 山頭火

「行乞記」昭和7年(1932年)8月10日の条に、「Sからの手紙は私を不快にした、それが不純なものでないことは、少くとも彼女の心に悪意のない事はよく解つてゐるけれど、読んで愉快ではなかつた、男の心は女には、殊に彼女のやうな女には酌み取れないらしい、是非もないといへばそれまでだけれど、何となく寂しく悲しくなる。それやこれやで、野を歩きまはつた、歩きまはつてゐるうちに気持が軽くなつた、桔梗一株を見つけてその一株を折つて戻つた、花こそいゝ迷惑だつた!」とあります。

8月2日の条に「七年目ぶりにS家の門をくゞる、東京からのお客さんも賑やかだつた、久しぶりに家庭的雰囲気につゝまれる。伯母、妹、甥、嫁さん、老主人、姪の子ら。」とありますから、掲句はこのS家の伯母か妹かと別れて9日ということでしょう。


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