一茶 寝すがたの蠅追ふもけふがかぎり哉 6月30日(旧暦 五月十三日)金曜日
寝すがたの蠅追ふもけふがかぎり哉 一茶 「廿日 熱ハ次第に盛にして、朝ハ淡粉(あはこ)一ツばかりたうべ給ひしが、昼比より御皃(かほ)のけしき青々と、目ハ半(なかば)ふさぎ給ひ、物ばしの給ひたきやう唇うごかし給ふばかり、いづる息引くいきに、痰ハころころと命を責メ、是さへ次第によわり給ひ、窓さし入る日影も未の歩ミ近(ちかづ)く比、人の俤も見ワき給ず、よろずたのミすくなきありさま也。(略) 只念仏申より外にたのミハなかりき。」として掲句が記されています。享和元年五月二十日(1801年6月30日)のことです。 この年三月、3年ぶりに帰郷していた一茶は、たまたま四月二十三日に倒れた父弥五左衛門の看病につき、臨終を看取ることになります。 「廿日の月ハ窓をてらし、隣々ハ寝しづまりてハ、八声の鶏も遠く聞ゆる比ハ、しきりに息の通ひも低くなり、(略) 天神地祇もあはれミもなく、夜ハほがらに明かゝり、卯ノ上刻といへる比、眠るごとく息たへさせ給ひけり。」 5-5-8の破調で、「の」、「も」で切れて、本来の切れ字「哉」で執着がありすぎる、一茶の実父を想う気持ちが強く出ている一句です。 chatGPT斎 今日の一句 父の影 蠅の音に 揺れている